■ 張り出し廊下 ■


  昭和14年(1939)建築の56号 棟、57号棟と呼ばれる建物の大きな特 徴は、それまでの島内の建築になかった 張り出し廊下を設置している点です。
  張り出し廊下とは、建物の外壁より路 盤が外側にはみ出している廊下の構造で すが、これによりそれまでの厚い壁の中 にある薄暗い廊下とは違い、開放感が格 段にあがりました。
  しかしこの張り出し廊下は構造上脆さ をともなうもので、操業時にも何度か崩 落の危険性が生じては、そのたびに補修 されてきました。その経験からか、それ 以降の建築物には張り出し廊下が採用さ れることはあまりなくなり、逆に居室の テラスへの採用に重点が移行していきま した。
 
56号棟

■ 張り出しベランダ ■


  張り出し廊下の試みと失敗の経験は、やがて張り出しのベランダ という形で実を結ぶことになります。
  画像中央の高台に見えるのは昭和16年(1941)建築の中央 社宅と呼ばれた職員アパート(14号棟)ですが、居室側に一直線 に水平なテラスが設置されているのが確認できます。しかもテラス を支えるように随所に梁が渡されていますが、これは上述の張り出

し廊下にはありません。画像左側に写るのは大正11年(1922)

に増設された日給社宅(20号棟)の居室側ですが、壁面より奥へ 引っ込んだ造りのテラスと対比すると、その違いがあきらかにわか ります。
 
 
 
14号棟

 
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