■ X階段 ■


  島内の建築物には、様々な遊び心がデザインとなって形に残って います。住宅棟が密集する潮降り街とよばれる一角に建つ独身鉱員 のための寮(67号棟)の外階段は、通称X階段と呼ばれる不思議 な構造をしています。実用性を考えると、横にまっすぐ延ばした方 が効率がいいと考えられますが、敢えて階段も兼ねる渡り廊下のデ ザインを採用したところに面白さを感じます。
 
 
 
 
 
 
 
67号棟

■ トイレ配水管 ■


  上記建物の隣に建つ鉱員独身寮(66号棟)の海側の壁面には、 画像のような綺麗なデザインが施されていますが、この部分はトイ レの配水管のためのものです。島内の建物は多くが半水洗で、階下 の汚物貯蔵槽に一時的に溜まるしくみのものでしたが、排便管と臭 気抜きが一本だったため悪臭の問題を抱えていました。その解決策 として階層が上に行くにしたがってトイレを海側にせり出し、それ ぞれの階からの排便および臭気の管を独立させる造りにしたもので す。
  本来は必要に迫られて造られた構造ですが、画像に見える各管の 間の隙間は当初から埋めてぺったりとさせてもかまわなかったもの だと考えられます。それを敢えて独立させた事で、ちょっとした遊 び心の感じるデザインになっています。
 
66号棟

■ 竈の煙突 ■


  56号棟、57号棟の屋上に立ち上がる竈の煙突は、それまでの 建物の屋上に見られたただ四角い煙突とは明らかに異なる、装飾的 なデザインが施されています。
  また中央に写る57号棟の屋上の煙突は、画像では小さく感じら れますが、実際は約8メートルの高さがあり、隣に建つ56号棟の 屋上煙突の最高部に迫るほどになっています。
  これは周囲の建物(日給社宅や56号棟)の上階へ、排煙の害が なるべく軽減されるようにとの配慮からうまれたものと考えられま す。
 
 
 
 
57号棟

■ 日給社宅の階段 ■


  日給社宅の1階両端の入り口へ上がる小階段は、小さいながら建 設当時の1920年代風のデザインが施されています。そしてこれ らのデザイン的に遊び心のある建物は、殆どが第二次世界大戦以前 に建てられた建物に多く(X階段のある67号棟は終戦の年、昭和 25年築)、戦後の建築になると、日本全国の傾向がそうであった ように、島内の建築物も合理的ではあるけれども、遊び心が感じら れないない建築様式へと変わって行きます。
 
 
 
 
 
 
日給社宅

 
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